メッシ香港戦欠場の本当の理由「政治利用されたくない」

国際

インテル・マイアミの親善試合でアルゼンチン代表FWリオネル・メッシが香港戦には出場せず日本では出場して中国国内でメッシへの反感が高まっている件、欠場理由は「脚の筋肉の損傷」としていますが、中国では「香港を辱めた」「民族差別だ」「中国が嫌いなのか」などと別の理由を疑う声が主流です。メッシと中国の関係、過去の中国訪問であったことなどからメッシが香港の試合に出なかった本当の理由は「政治利用が嫌」だという素直なメッシの思いが浮かび上がってきました。

メッシの過去の中国訪問であったトラブル

ビザなしで北京に到着「台湾は中国ではないのか」発言

2023年6月10日

中国で行われるオーストラリアとの親善試合のため、メッシが北京を訪れた時、空港で警察官に囲まれました。

イギリスのデイリーメールなどによると、メッシ選手はアルゼンチンとスペインの国籍を持っていて、過去にスペインのパスポートを使い、ビザなしで台湾に行ったことがあったため、中国にもスペインのパスポートがあればビザなしで入国できると勘違いしたとみられます。

また、この中で、メッシ選手は「台湾は中国ではないのか」とも話していたということです。

メッシ選手は空港で2時間待機することを余儀なくされましたが、その後、ビザの発行を受け、無事に入国の手続きができたということです。

TBS NEW DIG

メッシに抱きついたファンが公安に拘束される

画像:AFP

2023年6月15日に中国・北京で行われたサッカーの国際親善試合(アルゼンチン対オーストラリア)で、後半にアルゼンチンのユニホーム姿の男がピッチに入り込み、メッシに抱きついて地元警察に拘束されました。18歳と特定されたこの男に北京朝陽区の公安部が下した処分は、行政拘禁及び今後12か月にわたってスタジアムでの試合観戦禁止という厳しいものでした。

2010年四川大地震の被災児童訪問時の冷たい対応

2010年、2008年に大きな地震があった中国四川省汶川の被災地の子どもたちをFCバルセロナが慈善訪問した際、子どもたちが期待に胸を膨らませて待つ中、チームは約束より30分遅れて到着、出てきたのは誰にも知られていない若手選手たちで、メッシにひと目会いたいと嘆願する声に推されて渋々バスから出てきたメッシは、終始無表情で触れ合いや記念撮影を拒否したと現地メディアが伝えています。

「とっくに”前科”があった!メッシは14年前中国ツアーで被災児童に対し:冷たい顔+遅刻+記念撮影拒否」

中国百度

メッシの中国における絶大な人気

今回の香港でのメッシの態度に中国の人々が深く傷ついたのには、中国でのメッシの絶大な人気があります。

2023年6月の北京での親善試合にも、中国各地から7万人のファンが訪れ、チケット代は、400ドルから680ドル(約5万6千円~9万6千円)という高額であったにも関わらずあっという間に売り切れたそう。さらにチケットを持たないファンも数千人、メッシのユニフォームを着てスタジアム外で試合の行方を見守っていたそうです。

中国版X「Weibo」フォロワー数サッカー選手第2位

Weibo (中国版X)のサッカー選手フォロワー数は2023/6/16時点で以下のようになっており、メッシは第2位です。
クリスティアーノ・ロナウド 850万人
メッシ  810万人
ネイマール 740万人
騒動があった後の2024年2月11日現在、フォロワー数は変わっていません。

2020年南京にメッシのテーマパークが開園

画像:CCTV

テーマパークは「メッシ・エクスペリエンス・パーク(Messi Experience Park)」中国語:梅西体验园(足球主题公园)という名前で、中国南東部にある南京の約8万平方メートルの敷地内に、バルセロナのエースの一日を体験できるバーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)、輝かしいキャリアを振り返るマルチメディアディスプレイなど、室内、屋外合計20個のアトラクションがあります。

中国企業「Phoenix Group」と2017年の建設開始当時FCバルセロナに所属していたメッシのマネジメント会社『Futbol Club Barcelona Museum』を運営するスペインメディアカンパニー「Grupo Mediapro」が合同で運営し、「最新のアトラクションとサッカーをプレーする場所を組み合わせ、来訪者をメッシの宇宙に浸らせる」ということです。

騒動を受けて、このテーマパークも閉園してしまうのでしょうか?

中国国内での知名度をあげたメッシの慈善活動

メッシと貧困地域中国女子サッカーの物語

好看视频   

中国ではマンチェスター・ユナイテッドが人気でロナウドはずっと知名度が高いのですが、スペインでのキャリアが主だったメッシは、以前それほど知られていなかったそうです。

中国でメッシの知名度が上げるきっかけとなったのが、2013年に少数民族であるリー族ミャオ族が住む自治区への寄付だと言われています。

中国南部の海南省にある琼中(けいちゅう)と呼ばれる自治区で2006年に女子サッカーチームが立ち上がりましたが、当時経済的には困窮していました。選手たちはサッカーシューズがボロボロになっては自分で縫いながら練習をしていました。そのような厳しい条件下でも2009年には全国U16女子サッカー大会で3位に躍進、2010年には海南から初の快挙となる、全国U18女子サッカー大会に出場。

彼女たちの活躍に心打たれたメッシは、2013年、チームメイトのイニエスタと共に、サイン入りジャージを寄付。サイン入りジャージはオークションで3万元(約50万円)以上の値がつき、そのお金で少女たちにサッカーボールやシューズを買う事ができたとのことです。このニュースは、中国国内でかなり注目されました。

習近平主席のサッカー大国化への夢

中国の習近平国家主席は、中国の指導者になる約1年前の2011年に、サッカーの弱小国である中国をサッカー超大国にするビジョンを示した。

習氏は、サッカー界最高の栄誉であるワールドカップ(W杯)に狙いを定め、男子代表チームのワールドカップ優勝に向けた3段階の計画をまとめた。その計画とは、まずワールドカップへ2度目の出場を果たし、次に中国でワールドカップを開催し、最後にワールドカップで優勝するというものだ。

当時、世界の上位70カ国にも入っておらず、1957年に初めてワールドカップの予選に出場して以来、本大会出場はわずか1回という中国にとって、ワールドカップ優勝という課題の大きさは計り知れなかった。

しかし、2016年に中国サッカー協会(CFA)が、50年までに中国を「世界のサッカー超大国」にする計画を発表した時、習氏の決意に疑念を抱いた人はほとんどいなかっただろう。

その後、習氏やCFAの言葉を裏付けるように、中国サッカー界に投じられる資金が急増し、世界中の選手やファンたちを驚かせた。中国の不動産ブームで大もうけした政府系の複合企業や不動産開発業者らが国内最高峰のプロサッカーリーグに資金を湯水のごとく投入した。

その結果、海外のスーパースターたちが高額な報酬を求めて中国スーパーリーグ(CSL)に集まった。

やがて、CSLは支出額で欧州最大のリーグと肩を並べるようになった。好況だった15~16年には、移籍金の総額が4億5100万米ドルに達し、世界で最も支出額の多いリーグのランキングで上位5位に入った。

しかし、習氏が初めて自身の夢を語ってから10年以上が経過し、中国サッカーの運勢は、かつての急上昇と同じ速度で急落している。財務上のお粗末な決断や高官らの汚職疑惑、さらに3年に及ぶ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で、中国サッカー界は壊滅状態に陥っている。

CNN 2023/6/11

2011年以前、中国のサッカーは弱く、人気もなかったのですが、国家主席がサッカー強化を掲げて巨額の資金を投入し、海外の有名選手を招致したりしてきたおかげでサッカー人気が急上昇しました。それがここにきてまた急落したのもあり、今回の香港へのメッシ招致は習近平主席にとっても「中国のサッカーをまた盛り上げる」きっかけにしようという狙いがあったようです。

それが失敗に終わったため、香港を中国化した矢先というのもあり、国を挙げてのメッシ叩きにつながったという背景があります。

”メンツを潰された”中国と”政治利用されたくない”メッシの関係は完全に終了か

現在中国ではメッシのスポンサー企業商品の不買運動も起こり、3月に中国の杭州市で予定されていたアルゼンチン─ナイジェリア戦も中止になりました。中国人が最も嫌う”メンツを潰された”ことで、中国の怒りは当分治りそうにありません。

しかしメッシも「中国が嫌い」特に「共産主義のやり方が嫌い」なようです。メッシは生涯をサッカーに捧げてきたサッカーの神であり、世界的スーパースターです。彼はサッカーをするのに場所を選ばないし、特に人種差別主義者というわけでもないと思われます。実際日本ではニコニコでしたよね。

ただメッシは中国の政治に利用されるのがとことん嫌いで、偽善的な被災児童訪問や共産党が力づくで統一した香港のイメージ回復に自分が利用されるのが嫌なのでしょう。「スポーツを政治に利用するな」スポーツ選手としてしごく健全で当たり前の思いですが、今回のことで中国とメッシは完全に決裂したのかもしれません。

中国スマホの宣伝をするメッシ(画像:X)

 

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