19日朝、イタリアのシチリア沖で「英国のビルゲイツ」と呼ばれるテック起業家マイク・リンチ氏やモルガン・スタンレー・インターナショナルの会長であるジョナサン・ブルーマーなど22人が乗っていたヨットが沈没し、マイク・リンチ氏含む6名が行方不明になっている事故で、この2日前の土曜日にリンチ氏と同じ裁判で共に被告として裁かれていたスティーブン・チェンバレン氏が車に轢かれて亡くなっていたことがわかりました。
裁判勝訴からすぐの二人の大物起業家の事故、一体何があったのでしょうか?
日本ではまだ報道されていない事故詳細とその背景を、海外のニュースなどから調査しました。
シチリア沖ヨット事故は竜巻が原因だった?
英国旗を掲げた全長56メートルの帆船「Bayesian」は、月曜日の早朝にトルネードに見舞われた際、ポルティチェッロ港のすぐ沖に停泊していて、22人が乗船していました。
地元メディアによると、ベイジアンと名付けられたこのヨットは、夜間に激しい嵐に遭遇し、水上に竜巻が発生していたため、現地時間の午前5時頃に転覆したと報じられています。
近くに停泊していた別の船の船長は、風が強まったとき、船を制御し続け、Bayesianとの衝突を避けるためエンジンを始動したとロイターに話しました。
「我々は船をその場に留めることに成功し、嵐が過ぎ去った後、後ろの船が消えているのに気づきました」とカーステン・ボルナーは記者に語りました。別の船は「水面に平らになり、その後沈んだ」と付け加えました。
「風は非常に強かったです。悪天候が予想されていましたが、この規模になるとは予想していませんでした」
船は約49メートルの深さに沈み、テルミニ・イメレーゼの検察庁がこの事故を調査しています。
事故現場↓
22人のうち15人が救助 マイク・リンチ氏と娘は行方不明、妻は救助
全長56メートル(183フィート)の船には、イギリス、アメリカ、カナダ国籍の22人が乗っていました。1歳のイギリス人の女の子を含む15人が救助され、その中には船の所有者であるリンチの妻、アンジェラ・バカレスも含まれています。
現時点での行方不明者は、マイク・リンチ氏、その娘ハンナ、ニューヨーク市に拠点を置く弁護士のクリストファー・モーヴィロ(リンチ氏の無罪を勝ち取るのを助けた人物)とその妻ネダ、モルガン・スタンレー・インターナショナルの会長ジョナサン・ブルーマーとその妻です。
(左から)起業家マイク・リンチ氏(59歳)/弁護士のクリストファー・モーヴィロ/モルガン・スタンレー・インターナショナルの会長ジョナサン・ブルーマー
行方不明者は皆、船内に閉じ込められていると考えられています。生存は絶望的と見られます。一人の男性の遺体が船の残骸の外で発見されましたが、身元は確認されていません。
マイク・リンチ氏の金融詐欺事件裁判勝訴を祝うヨットクルーズだった
生存者によると、このヨット旅行はリンチが仕事仲間のために企画したものでした。
Autonomyというソフトウェア企業をスティーブン・チェンバレン氏と共同設立したリンチは、彼の会社をアメリカの技術会社ヒューレット・パッカードに110億ドル(約8600億円)で売却したことに関連して、詐欺の告発を受けて裁判の被告となっていました。
リンチ氏は1年以上ほぼ自宅軟禁状態で生活した後、6月にサンフランシスコで陪審によって無罪を宣告されました。
裁判の勝訴を祝うために、弁護士や仕事仲間を誘って家族帯同でヨットクルーズに出かけました。
ヨットの乗船者のほとんどはリンチ氏の同僚で、乗船者の一人で救助されたニュージーランドの弁護士、アイラ・ロナルドはロンドンでリンチの長年にわたる詐欺事件に取り組んでいたと彼女の父親が述べています。
裁判の共同被告スティーブン・チェンバレンは2日前に交通事故で死亡
スティーブン・チェンバレン氏(享年52歳)
オートノミー社の元財務副社長であるチェンバレン氏は、8月17日土曜日の朝に車にはねられ亡くなりました。チェンバレン氏の弁護士であるゲイリー・リンケンバーグ氏は、声明で、彼がイングランドのケンブリッジシャーでランニング中に車に「致命的に衝突され」亡くなったと述べました。
この事実は、リンチ氏のヨット事故の数時間後に明らかになりました。
金融詐欺事件の裁判の被告2名が、勝訴して間も無く立て続けに事故で亡くなったのは、果たして偶然なのでしょうか?
参照サイト:
CNN
the guardian
BBC
AP news
people.com